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第92話 これは俺の手柄? ~アグリサイド~

Author: 光命
last update Last Updated: 2025-06-20 19:25:30

訓練と移動を繰り返しながらさらに数日――

ようやく首都セントハムに到着した。

その間、魔王軍が襲ってくることもなく……

あれだけちょくちょくと現れていた魔王軍だったのに。

「なんかここに辿りつくまで、魔王軍は一回も来なかったな。

 ちょっと不気味に感じる……」

俺はゾルダにそう話しかけた。

「そりゃ、当然じゃろ。

 あれだけギタギタにされて、策もなく突っ込んでくる奴らはおらんのぅ。

 どうせ、ゼドのことじゃ、何かまた企んでおるのじゃろぅ」

ゾルダは『これだけ負ければ普通は考える』と言わんばかりに答える。

「メフィストは流石にゼド様の下に戻っていないとは思いますが……

 連絡がないことに異変を感じていらっしゃるかと。

 次の策を考えているところでしょう」

セバスチャンはゼドの心中を察するかのようなことを言っている。

詳しくは聞いていないけど、セバスチャンもゼドとの付き合いは長いのだろう。

「あきらかに力負けしているのだから、ねえさまが言い通りですわ。

 ゼドっちもバカではないですから」

マリーもみんなの意見に同調していた。

「そういうものかな……

 魔王軍はもっとなんかこう脳筋ばかりかと……」

今までが今までだけに、浅はかな考えでくる奴らばかりなのかと思っていた。

そう感じたことを口にしたのだが……

「それではワシらがバカみたいではないか」

とゾルダが怒り始めた。

「いや、そういう意味ではなく……」

しどろもどろになっている俺をセバスチャンがフォローしてくれた。

「お嬢様、アグリ殿は今の魔王軍のことをおっしゃっているのですよ」

「おぅ、そうか。

 確かにワシが魔王していた頃より、考えが浅い奴らが多い気がするがのぅ。

 それもゼドの自業自得じゃろ。

 あれだけ自己中心的なら、周りから何も言えんのぅ」

ゾルダさん、自分の事を棚に上げて自己中とは……

「えっ……

 ゾルダも十分自己中だと……」

「ワシがか?

 どこが自己中じゃと?

 ワシは周りの事をいつも思っておるぞ」

どこが周り思いなのか……

俺は振り回されているけどね。

「はいはい」

そんな思いが言葉の端々に滲む返事をした。

「おぬしはその、『はいはい』と軽くあしらうのをやめるのじゃ。

 でもないと……

 おい、セバスチャン!

 こいつの訓練、もっと厳しくするのじゃ」

「はっ、仰せのままに」

この数日で少しは耐えれる
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    ゼド様のご命令は絶対ですが、少々荷が重いというかなんというか……前魔王のゾルダ様やマリー様の実力は十分存じ上げています。確かに封印が解けたばかりとは言え、私の実力でどこまで対抗できるかは心配ではあります。まだ力が戻り切っていないことを願うばかりです。私もあれから強くなったとは言え、若干不安はあります。二人ともは厳しいでしょう。どちらか一人、特にマリー様の方を片付けられればまずは成果として申し分ないはずです。マリー様にターゲットを絞り、その後は撤退すると言うのが合理的な戦略でしょう。そんなことを考えながら、お二人の居場所を探していました。ラヒドに居たことは連絡を受けているので、そう遠くには行っていないでしょう。その辺りを探していると、大きな反応が1つ、2つ……3つ?あの魔力の反応であれば、ゾルダ様とマリー様ではあるのでしょうが、もう一つはいったい……急いで感知した方向に手下ども数十人と向かいます。しばらく飛んでいると姿が見えてきました。あの一行に間違いなさそうです。追いつき、その一行の前に立ちふさがると、深々とお辞儀をさせていただきました。「お久しぶりです、ゾルダ様とマリー様。 ゼド様のご命令です。 この場から消えていただきます」挨拶を終え、頭を上げるとそこには……な……何故、あの人がいるのでしょうか?……「誰じゃ? ワシは知らんのじゃが…… マリーは知っておるのか?」ゾルダ様は私を存じ上げていないようです。「あっ……はい。 多少は知っていますわ。 ゼドっちの近くにいた方だったと…… それよりか…… セバスチャンの方がよく知っているはずですわ」「そうなのか、セバスチャン。 お前の知り合いなのか……」「はい、お嬢様。 知り合いと言うかなんと言いいますか……」私が二人より気になった男は、なんとも言えない顔でこちらを見ていました。「何故、何故あなたがここにいるのですか?」思わずその男に向かって声が出てしまいました。ゾルダ様やマリー様の復活は聞いていましたが、あの人まで復活しているとは初耳です。「何故と言われてもですね…… お嬢様に助けていただいたとしか言いようがないですが…… しかし、久々に会ってその言いようはなんでしょうか。 また一から教育する必要がありますかね」そう、この人は私をゼド様

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